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ふと時計を見ると既に22時を過ぎていた。
「え、もうこんな時間?!」
思わず大きな声で言ってしまった私に彼も同じように壁に掛かっている時計を見て「おぉー、あっという間に二時間以上も経ってしまった」なんて言っている。
(嘘みたいに時間が経っている……)
彼とゲームで盛り上がっていた時は一切時間の概念がなかった。早くお風呂に入って明日に備えてある程度の支度をしなくてはいけないと、いつも考えることが出来なかった。それは即ち──
(どんだけ夢中になっていたっていうの?!)
冷静になって考えてみれば彼とゲームをしていた時の私はいつもの私でいられたのだろうか?
きちんと分厚い猫の被り物を着込み続けていられたのだろうか?
……………
(……覚えていない!)
私がどんな風にゲームに興じていたのか全く記憶になかった。もしかして──と不安を覚えつつ彼の顔をチラっと見るとバチッと目が合った。
「蘭ちゃん、先にお風呂入っちゃって」
「……え」
「俺、烏の行水だから。それに風呂に入ったらすぐに寝るから多少遅くなっても大丈夫」
「そ、そうですか?」
「うん。また明日ゲームしようね」
「……はい」
何故か素直にそう答えていた。いつもならその親切さの裏にどんな企みがあるのか、なんて考えてしまうのに。
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