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「あー、蘭ちゃんのご飯、本当に美味しい」
「そうですか。それはよかったです」
「本当、蘭ちゃんはいい奥さんになるよね。俺って果報者だぁー」
「……」
彼の過剰なリップサービスにも慣れてしまいいちいち突っ込むこともなくなった。
心の奥底でそれは蓮と繋がるために発せられている言葉だと分かっていてもそれを素直に嬉しいと感じて来てしまっている。
「ご飯食べてお風呂済んだらゲームしようね」
「はい」
「今日こそは魂狩りの渓谷、制覇したいなぁ」
「ですね。……というか私の戦力不足ですみません」
「いやいや、装備加算で充分突破出来るクエだから。心配しないで、ちゃんと育ててあげる」
「……はい」
ゲームの話をするのは楽しい。そしてそこから窺い知れる彼の人柄に触れて行くにしたがってただ見かけがいいだけではなく内面もいい人なのだと知って行く。
(容姿が好みでなくてもやっぱり人間って中身、なんだな……)
まさかそんな綺麗事の典型例のような言葉を彼に抱いてしまうとは思わなかった。
見かけと中身がそぐわない──それは父や蓮に通ずるものがある。
父も蓮も強面で屈強なその見た目から周りには随分怖がられた存在だった。
だけど中身は驚くほど優しくて繊細。且つ一途にひとりの女性を愛し続ける気高さと純真さがあることを知ると一気に彼らの虜になってしまう。
かくいう私もそのひとりだ。
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