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理想の男性は父。そして双子でありながら私にはないものだらけを持つ兄の蓮。親子、兄妹ではなかったら恋に落ちていただろう存在。
でもまぁ、血縁者だからふたりの良さを知ることが出来たという点においては母や花咲里に大きく負けている。
だから私は私の理想の男性を探し続けている。父や蓮のように見た目が大きくて強面で色々誤解されてしまう男。だけど恋人や妻にだけは優しいギャップがある人が理想。
そんな人を探し続けていても結局は私自身が本当の私を相手に晒せない以上まともな恋愛が出来るわけがないのだけれど。
「……」
そんなことを考えながら前に座っている彼を見つめる。
彼は私の理想とはほど遠い人だけれど、それでも一緒にいて楽しいと思えるのはメリットだと思う。
思惑があれど彼自身、私との結婚願望があると分かっているからこのままその流れに準じてもいいのかもしれないと思ってしまっている。
ただ一点を除いて──だけれど。
「蘭ちゃん?」
「──え」
「どうしたの、ボーッとしちゃって」
「あ……いえ、別に」
「なに考えていたの」
「……」
会話を促す彼にひとつカマをかけてみた。
「最近、蓮はどうですか」
「え? どうって」
「会社ではちゃんとしていますか? 新婚だからって浮かれて仕事にならないとか、そういうことはないですか」
「……」
この家に来てから初めて蓮のことについて訊いてみた。今まではなるべく蓮の話はしないようにとわざと気遣っていたのだけれど。
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