flavorsour 第三章

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「──人として好き……なんだけどなぁ」 彼が何かを小さく呟いた。考え事をしていた私には呟いた言葉が聞き取れなくて俯いていた顔を上げた。 彼が私をジッと見つめていた。その視線が何か言いたげだったからつられてジッと見つめてしまった。 「あの……今、なんて」 「人として好きなんだよ」 「は?」 (人として好きって……何が?) 彼の言葉を訊いてもよく分からなかった私は更に掘り下げようと口を開きかけたけれど── 「あ、ヤバッ! 俺、携帯充電していなかった! これは拙い、ちょっとごめんね」 なんて言いながらバタバタと自室へ向かって行った。 そんな彼を呆然と見送ることしか出来なかった私はすっかり先刻の彼の言葉の意味を訊き返す機会を失った。 (確か……人として好きって言っていたわよね?) それは一体どういう流れで出た言葉なのだろう。彼のその言葉が出た前の会話はどうだったのか懸命に思い出そうとするのだけれど…… (蓮のこと、可愛いって) テディベアのようだと言っていたような…… (…………あ!) そうか、蓮のことをテディベア──つまり熊のようだと例えたけれど、ちゃんととして好きだと念を押したのだろう。 (そんなこと言われなくても分かっているわよ!) 確かに蓮は見かけこそ熊のようだけれどちゃんとした人間だ。彼は熊ではなく人として蓮のことを好きだと、そう言ったのだ。 (なんか上手くはぐらかされたのかな) やっぱり彼と蓮の話をするのは辛いと思ってしまうのだった。
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