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脅威の箱を始末し終えた俺は念入りに手を洗いリビングへと戻った。
「……ぁ」
俺の姿を見た彼女が小さく言葉を吐いた。
「もう大丈夫だよ」
「そうですか……ありがとうございます」
「いやいや、こういうのはやれる方がやればいいからね」
なるべく彼女が気にしないように言葉をかけた。──しかし彼女は何かを考えているようだ。
(あれ? なんか気に障ることでも言ったかな)
なんて思ったと同時に頭に流れ込んで来た彼女の心の声。
アレッテ イッピキデモイタラ サンジュッピキハイルッテ イワレテイルケド
(……あぁ)
俺の言葉や態度でよからぬことを思い耽っているのではないと分かるとホッとした。彼女の憂いが何か分かると自然と解決法が導けた。
「俺、ちょっとドラッグストアに行って来るよ」
「え」
「ほら、アイツって一匹見かけたら三十匹はいるっていわれてるじゃん」
「!」
ソレ! イママサニ ワタシガオモッテイタコト!
オナジコト オモッテイタダナンテ ナンカ ウレシイナ
(……)
彼女は俺の言葉を微塵も疑わず、寧ろ同調してくれたことに嬉しがっているようだ。
(あー……本当、心根の素直な子だなぁ)
彼女の心の声を聞いて一度たりとも不快に思ったことがなかった。表の態度と本音が見事にシンクロしていて、そこに嘘がないことがこんなに爽快だとは知らなかった。
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