flavorsour 第四章

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身支度をして彼女と一緒に買い物へと出かけた。出勤時に一緒に歩くことはあってもそれ以外でこうやってふたりで出かけることは滅多になかった。 休日はもっぱら家でゲーム三昧。最近では一緒にプレイするゲームも増えて休日はあっという間に過ぎ去ってしまう。 彼女は倹約家なのか進んで外食したいと言うことがなく、休みの日は大抵彼女が食事を作ってくれる。平日よりも少し手の込んだ料理を作ってくれるのが嬉しかった。 そうして気が付いた。彼女は案外インドア派なのだと。俺自身も誘われれば遊びに行くが基本インドアだ。 どうにも人混みは苦手だった。その原因は俺のこの特異体質によるところが大きかったが。 関心のない人物の心は聞こえないという救済措置はあったが、それでも全く頭に流れて来ることがないとは言い難かった。 とにかく繁華街という場所は大なり小なり関心を惹く人物に遭遇するからそのほんの些細な声も俺にとっては煩わしいものでしかなかった。 しかも同行している友人や恋人──そういった身近な人物の心の声ほど煩く頭に響くものだから厄介だった。 (その点……) 自然と隣を歩く彼女をチラリと見た。 ヒツヨウナモノハ メモシテキタケレド ホカニモナニカアッタヨウナキガスル キョウハナニヲツクロウカナ キブンテキニハチュウカナンダケレド ハルナサンハドウカナ (うーん……清々しいほどに喋り言葉) 口に出してもなんら遜色のないことを考えている。それが彼女の本音。 俺に対してあれこれ考えない時は徹底的に考えない。だから彼女と一緒にいても苦痛を感じない。
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