flavorsour 第一章

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だけど丁度その頃、私にお見合いの話が舞い込んで来た。 父の古くからの知人の息子との縁談ということで断れずにお見合いすることになったけれど、それを彼に包み隠さずに話した。 父の顔を立てるために一度だけお見合いするけれど絶対に結婚はしない、と。しかし彼はあっさりと私から身を引いてしまった。 見合い相手がとてつもないハイスペックな人物と知った彼はという(てい)で別れたのだ。 本当は自分自身に自信のなかった彼は私から逃げた。 つまり何もかもをひっくるめて奪い去るほどに私のことが好きじゃなかったということなのだ。 (意気地なし!) あっさりと私の元を去って行った彼に対して未だに心の中でそんな悪態をついてしまう。 ──ちなみにその時お見合いしたハイスペックな相手は妹ののばらを気に入り結婚して今では義理の弟になっているのだけれど。 (歳上の義弟……か) 兄妹弟(きょうだい)が多いとそういうことにもなるのだ。 (あー……嫌なこと思い出しちゃった) 変にボーッとする時間があると色々考えてしまっていけない。過ぎたことはとっとと忘れて少しでも幸せになる道を模索しなくてはいけないのに。 (何か楽しいことを……) そう考えてなんとなく浮かんで来たのは先刻まで行われていた合コンの参加者である榛名さん。 蓮の先輩社員ということで全く知らない人ではない。──といっても会ったのは今日で二回目だけれど。
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