flavorsour 第四章

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──しかし、あまりのんびりと事を構えている時間はないのかもしれない、というような出来事が突然舞い込んだ 「ん? 何これ」 「あ、これですか? 綺麗でしょう?」 平日のある日、帰宅した俺はリビングに見慣れないものがあったのに気が付いた。それは綺麗な花が植えられている植木鉢だ。 「うん、綺麗だね。買って来たの?」 「いいえ、貰ったんです」 「貰った?」 「えぇ、会社の人に」 「なんで会社の人が蘭ちゃんに花を贈るの。しかも鉢植えで」 「実は──」 そうして彼女はその鉢植えを貰った経緯を話し始めた。 いつも昼食を摂る会社の屋上の花壇を手入れしている庶務課の男性が彼女のために贈ったそうだ。 その男性はいつも彼女が花壇の花が綺麗だ、癒されるといっていたことから自ら世話した花の株分けをしたということらしい。 「へぇ、社員なのにそういう世話もするんだ」 「えぇ、とてもいい人ですよ」 「……」 彼女がにこやかにその男性のことを話すのに少し引っかかりを感じた。 (珍しいな、彼女がこんな風に話すなんて) 一体どんな人なのだろうとつい気になってしまう。 シマサンニ ナニカ オレイヲ シナクッチャ (しまさん? 苗字? 名前?) 聞こえて来た彼女の心の声が俺の胸を盛大にざわつかせた。
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