flavorsour 第四章

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ついでにいえば妹の名前も【のばら】で、花の名前が付けられていたと気が付いた。 「好きといったら……撫子、でしょうか」 「なでしこ?」 「えぇ。花弁のフリルみたいな形やグラデーションがかった色とか……可愛いなと」 「……そっか」 (うーん……なでしこがどんな花かさっぱり想像出来ない) 残念ながらさほど花に詳しくない俺はオーソドックスなタンポポやチューリップなどといった花なら分かるのにと密かに舌打ちをした。 (後で調べてみるか) そんなことを思っていると彼女の中から『しまさん』がすっかり消えていたことに俺はすっかり気をよくしていた。 そんな一件があってから数日後。 徐々に彼女の様子が変わって行くのを俺は感じていた。何か考え込んでいる時間が増えてボーとすることが多くなった。 (なんだ? どうした) こういう時、皮肉にも自分に備わっている厄介な能力があってよかったと心底思った。 いつもと同じように一緒に食卓を囲んでの夕食時。今日は出先からそのまま直帰した俺が夕食を作った。 オーソドックスなハンバーグとポテトサラダとライスをひとつの皿に盛った某ハンバーグチェーン店のようなワンディッシュスタイル。 ハンバーグにかけるソースは二種類用意し、ハンバーグはお替わり可だ。我ながら上手く出来た夕食だった──のだが。
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