flavorsour 第四章

14/42

1789人が本棚に入れています
本棚に追加
/402ページ
先刻『いただきます』と言ったきり彼女は無言だった。おまけにいつもより食べるペースが遅い。それは何か考え事をしているという証拠だ。 (なんだ、何を考えているってんだ) 別に美味しいと言ってくれないから拗ねているわけじゃない。ただこんな彼女を見たのは初めてだったから気になって仕方がない。 (……はぁ) 彼女には悪いと思いながらも今回は意識的に彼女の心の声を聞かせてもらおうと思った。 実は長年の功か、最近になって敢えて心の声を聞こうと思わなかったら聞こえないという技が身に着いていた。 今までは自分が意識していようがいまいが勝手に頭の中に流れ込んで来たものだがそれが無くなりつつあったのだ。 (不思議なんだけどな) 彼女と知り合って、一緒に過ごして行くうちに何となくだがこの能力が薄まっているような気がした。 (──というわけで) 申し訳ないと心の中で手を合わせてから彼女に集中した。 ドウシテ ナンダロウ ぼんやりと聞こえて来た彼女の心の声。 ゼッタイニ グウゼンナンカジャ ナイヨネ イキナリスギダシ チョット コワイナ (なんだ、それ) 彼女から聞こえた声を自分なりに整理、解釈すると、つまり彼女は現在進行中で怖い目に遭っているということ。 いつもの帰り道で偶然会う人がいる。その人物は最近この近くに越して来たと言っている。
/402ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1789人が本棚に入れています
本棚に追加