flavorsour 第四章

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そしてその日の夕方。俺は少し早めに退勤してバス停近くのドラッグストアにいた。 つい三十分ほど前に彼女から【今から帰宅します】のメールが届いていた。彼女の会社から此処までのおおよその時間を計算しながら店先の商品を見る振りをしていると俺の前を大柄な男が通り過ぎて行った。 (……ん?) 知らない男だったがなんとなく何処かで会ったような気がした。その男は何故かバス停が見通せる近くの店の角を曲がって行った。 (今のって) 一瞬ごく普通の歩行者で自然に角を曲がって行ったと思ったら、その角からあの大きな体が見え隠れしているのが確認出来た。 もしかしてあの男が──そんな直感が働いたと共に、先刻感じた何処かで会ったことがあるようなという既視感の正体が解り少しだけ不快になった。 (そうか……似ているんだ) 俺と彼女がよく知る人物──伊志嶺蓮に。似ているといってもあくまでも雰囲気が、だ。細かく見れば全く似ていないのだが、人間を大きく分類した時には一括りにされるような似方だった。 そんなことを考えていると停留所に到着したバスから彼女の姿が見えた。普段見ている距離感よりもうんと遠くから見る彼女はなんだか新鮮だった。 姿全体が見えるこの距離は自然と彼女を取り巻く周辺環境にも目がいった。 (一緒に降りたリーマン、二度見したな) 彼女が颯爽と歩く姿を振り返って見る者や連れがいるにもかかわらず見惚れてしまい怒られている者がいたり、とにかく彼女は目立ちまくっていた。
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