flavorsour 第四章

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(あー言いたい。彼女はおれのものだって) まだ完全にものにしているわけではないが、いつかそこへ辿り着くだろう道標は出来ているように思える。 というか、今この空間にいる男たちの中で自分だけが彼女の特別なのだという謎の優越感が俺を高揚させた。 (っ、おっといけない!) 彼女を視界に捉えると同時にもうひとつの影が動いたのを視認した。 ある一定の距離感を保ちつつ嶋は彼女の後をついて歩いている。これはもうどこからどう見ても付きまとい行為だと確信した。 俺は彼女の後をつける嶋の後をつけていた。この日は嶋の顔とどういった流れで彼女に近づき、接触するのかを把握するに留まった。 彼女が帰宅してから随分経ってから帰宅した。 「あ、おかえりなさい」 「ただいま。今日はどうだった?」 「? 特に何もありませんが」 「付きまといのことだよ」 「あ、あぁ……それも今日は特に何もなかったです」 「…そっか」 (──なんて、本当は全部知っているんだけど) 嶋の後をつけて様子を窺っていた俺は知っていた。今日は彼女に接触しなかったことを。ただ遠巻きにジッと彼女を見ていただけで終わった。 彼女から訊いていた話ではいつもは偶然を装い話しかけて来るといっていたが今日はそれがなかった。 (いよいよヤバいかも) 俺からしてみれば接触もなくただ黙って後ろをついて回る行為の方が怖い。 案の定、今日は彼女がマンションに入る処までを見て嶋は帰って行った。つまり彼女が住んでいるこのマンションは嶋の知るところになったということだ。
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