flavorsour 第四章

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だけどそこで疑問がひとつ浮上した。そもそも何故彼女がこの地域に住んでいるのが分かったのか。 恐らく会社からつけて来たのだろうと考えればそれまでなのだが、それにしてはつきまとい行為が始まったのが最近というのが気になる。 彼女によれば嶋とは随分前から話をすることがあったというし。 (何故急に積極的に動き始めたのか?) そこら辺がよく分からなかった。 「あの……榛名さん」 ついぼんやりしてしまった俺の服の袖を彼女が引っ張っていた。その仕草が可愛くて思わず乙女のように心の中できゅんとした。 (この子、時々こういうことするよなぁ) 無意識にやっているのどうか分からないが、彼女のこういった些細な仕草は時には男側にあらぬ妄想を抱かせてしまうきっかけになるような気がした。 特に女慣れしていなさそうな恋愛下手な男にとっては── (………あ) そこで不意に思い浮かんだひとつの仮説があったが、それを彼女に訊いてもいいのかどうか迷った。 それを訊いたことによってまた彼女を怖がらせたり悩ませたりするのは本意ではなかったから。 「榛名さん、訊いていますか?」 「っ………あ、あぁ」 「訊いていませんでしたよね、絶対」 「……」 少し頬を膨らませた彼女の拗ねています風の顔にまたしても動悸が早くなってしまった。
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