flavorsour 第四章

26/42
前へ
/402ページ
次へ
そうして迎えた決戦の日。勿論、俺が勝手に決めた決戦の日だけれど。 (今日で終わらせたい) そんな気持ちを強く抱いてその日はいつもよりも早めに退勤して彼女が利用しているバス停で張り込みを開始した。 以前、嶋を見かけた時と同じくらいの時間を目安にして数十分前からスタンバイした。 携帯の時計を見れば丁度彼女がいつも退勤する時間になっていた。それと同時にピン♪ と携帯の画面にメッセージを受信したアイコンが浮かんだ。 【今から帰ります。スーパーに寄りますが何か食べたいものはありますか?】 彼女からのメッセージに胸が躍った。 (なんだよこれ。こんなのまるで新婚さんのようなやり取りじゃ──) なんて色ボケしたことを考えていると俺の座っているベンチ前を大柄な男が横切った。それは前に見かけたことがある男──嶋だった。 (ってか前も思ったけどなんで彼女より先にバス停にいんの?) 確か彼女の会社は部署など関係なく同じ終業時間なのだと訊いた。それなのに嶋はいつも彼女が会社を出る頃には既にこの場所に到着している。 (なんというか……) 恋は盲目──恋をすると周りが見えなくなるといった厄介なタイプなのかと予想するとげんなりした。
/402ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1808人が本棚に入れています
本棚に追加