flavorsour 第四章

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(あぁいうタイプには何か弱味を握られるネタがあるといいんだけどな) そうは思っても俺と嶋に直接的な交流があるわけではないからそれは難しい。単に彼女の後を付けてコソコソ見ているだけという行動を咎めたところで開き直りそうだ。 しばらく思案していた俺は彼女のメールに返信をした後、一か八かの賭けに出ることにした。 やがて停留所にバスが到着し彼女が降りるのが見えた。俺がそれを目視したと同時に店の角に潜んでいた嶋が彼女の後ろについて歩き出した。 なるべく彼女には見えない処でと思いながらスーパー方面へ行くために彼女が曲がり角を曲がった処で嶋の肩を叩いた。 「っ!」 面白いように驚いた嶋が振り返り視線が合った。 「ちょっといいですか」 「な……なん、ですか?」 俺の存在に明らかな動揺と拒否感がその態度や口調から伝わる。 「彼女のことについて話があるんです。ちょっと付き合ってもらえないですか」 「……」 俺は始終笑顔で対応した。勿論、心からの笑顔ではない。それを嶋も悟ったのか、俺の言葉に反論することなく大人しくいうことに頷いた。 その素直な態度にひょっとしたら思っていた以上に気の弱い、大人しい男なのかもしれないと思った。 (だからといって見逃せないけどな) 彼女に関することで情に絆されることはないと強く決意しながら嶋を連れて近くの喫茶店へと入った。
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