flavorsour 第四章

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店内奥のテーブル席に座ると店員が「いらっしゃいませ。ご注文は?」と訊きに来た。 メニュー表も見ずに「コーヒーを」と答えると向かい側に座った嶋も「……同じものを」と呟くように言った。 店員が離れて行き数十秒、口火を切ったのは俺だった。 「嶋さんですよね」 俺がなんの躊躇いもなく名前を告げたことに嶋は分かり易く肩を揺らした。 「彼女から訊いて知っています」 「……」 「単刀直入に訊きます。あなたはどうして彼女の後を付けているんですか」 「……」 ダラダラ話すことはないと初っ端から攻めの態勢で切り込んだ。そんな俺の質問に嶋は俯き、大きな体を縮こませた。 (悪いことをしているって自覚はあるようだな) 思慮深く嶋を観察する。嶋が何も言わない間に注文したコーヒーが届き、俺は静かにそれを手に取った。 するとそれが合図となったのか、嶋は俯いていた顔を上げ口を開いた。 「……あの」 「はい」 「……」 「なんですか」 隙を与えずきっぱりと受け答えする。 「……あなたは……誰、ですか」 「……」 「彼女とは……一体……」 (どういう関係なのか──と言いたいのか) 最後までいわずに言葉を濁した嶋に対して急遽、当初考えていた彼女との関係を言わないことにした。
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