flavorsour 第四章

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俺が前から疑問に思っていたこと。それは何故彼女がこの地域に住んでいるのが分かったのか。 普通に考えれば会社からつけて来たのだろうと思うのだが、彼女によればいつも嶋の方が先に会社を出ているとのこと。 彼女のその証言は俺がバス停を張り込み始めた時から先にバス停に着くのがいつも嶋だということからも裏付けられた。 (最初の時だけ彼女の後をつけて下車する処を知った?) 大方そんなところだろうと思ったが、今、嶋から聞こえた心の声からその真相を知ってしまったのだ。 (こいつ……本当は危ない奴だな) 一瞬でも人畜無害な恋愛に奥手な気弱男と認識してしまった自分自身に怒れてしまった。 (これは徹底的に潰しておかないと……だな) 全てを知り悟った俺はこれ以上の問答は必要ないとばかりにカップに残っていたコーヒーを一気に飲み干した。そして嶋を真っ直ぐに見た。 「分かりました。要するにあなたは今日、本当にただ偶然見かけた蘭さんに声をかけようと思い後ろをついて行った。──ただそれだけのことで蘭さんが不安に思っていた付きまといの件とは何も関係がないと、そういうことなんですね」 「……あ……はい」 俺の言葉に嶋はようやく口を開いた。
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