flavorsour 第四章

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辿り着いた自宅玄関の鍵を開け靴を脱ぎながら「ただいま」と言うとすぐにリビングから彼女が早足で駆けて来た。 「おかえりなさい!」 いつもよりもやや強めに挨拶をされて一瞬驚いてしまったが ブジニ カエッテキタ 口に出されるよりも先に彼女の心の声が届いて驚きは安心感に変わった。 「よかった……無事に帰って来て」 (ははっ、相変わらず心と口の言葉が同じだなぁ) 裏表のない心地よさに触れて少しだけささくれ立っていた気持ちが凪いだ。こんな彼女だからこそ悲しい目や怖い目になんか遭わせたくない。全ての不幸から守ってやりたいと自然と思えてしまう唯一無二の女性だ。 「無事も何も単に話し合いをして来ただけで危険な目には遭わないって念を押したじゃない」 「それはそうですけど……でも、やっぱり……」 スゴク シンパイダッタ (……はぁ……参ったな) 最近彼女のツンとデレの割合が変化しているような気がする。最初の頃はそれこそツンの割合が高かったのにここに来てほぼ半分の割合になっているように思う。 もっともそれは俺自身の勝手な思い込みでしかないが。 「それであの……嶋さんとは」 「それ、食事を摂りながらでもいい? 俺、腹ペコでさ」 「あ、はい、勿論」 分かり易く会話を一旦逸らして彼女ににっこりと笑って見せた。そんな俺の様子に彼女も俺自身に悪いことは起きなかったのだろうと悟ったのか、強張らせていた表情が少し柔和になった。
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