flavorsour 第四章

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洗面所で手洗いうがいを済ませ、部屋着に着替えるために自室に入った。着替えてからリビングに行くと自然と視界に入るものがあった。 それは嶋が彼女に送った植木鉢だ。 (さて、どうしたものか……) ブーゲンビリアという花が植えられている鉢を間近で見て思案に暮れる。ただ、どうしたものかと思ってはみたが取る行動はひとつしかない。それをするには彼女がいない時でないと出来ないが。 (彼女が風呂に入っている時にでもやるか) そんなことを思いながら彼女が俺のリクエストに応え用意してくれた夕食を美味しくいただくことにした。 「あー美味い。本当蘭ちゃんの作る塩麹の唐揚げって美味しいよね」 「ありがとうございます」 「お肉も柔らかくてジューシーでふわふわで」 「……」 「俺が作るとどうしてもパサパサになってさぁ」 「……」 最初こそ俺の話に相槌を打っていた彼女だったが、次第に黙り込み俺の顔をジッと見つめる様になった。 ナンダカ ハナシヲ ハグラカシテイルミタイ (いや、別にはぐらかしているってわけじゃなけど) 彼女の表情と聞こえて来た心の声が連動していて、まさに目は口ほどに物をいう状態だ。 断じてはぐらかしてはいない。単にあまり気の進まない会話の前に美味しい食事の感想を素直に言いたかっただけだったのだが。 (きっと気になることはさっさと訊いて安堵したいんだろうな) 相手の気持ちになって考えてみれば彼女のジト目の訳も納得だ。
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