flavorsour 第四章

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ただ、彼女のそんな表情も可愛いからそのままずっと見ていたいという気持ちもあった。でもそれは彼女からの「榛名さん、話をはぐらかそうとしていませんか」の言葉の前には敵わなかった。 「いや、別にはぐらかしていないよ。ちゃんと話すけどその前に蘭ちゃんが俺のために作ってくれた美味しいご飯の感想を言わせてよ」 「べ、別に榛名さんのためにってわけじゃ」 「うん、分かっているけどそこはあえてそう思いたいの、俺」 「~~~」 (あー分かり易く赤くなった。めっちゃ可愛い過ぎないか、それ!) 本題に入る前の緊張を解すつもりでおチャラけてみた言葉だったが勿論そこに嘘は何ひとつ含まれていない。 でもこれ以上の話の逸れ方は蛇足過ぎだと思い、きちんと彼女に向かい合って話し始めた。 「今日、嶋さんと会って話して来た」 「!」 少しだけ声のトーンを落とした俺に彼女は居住まいを正した。 「今日も蘭ちゃんの後を付いて行こうとしたからすぐに引き留めて話を訊くために近くの喫茶に行った」 「……はい」 彼女の表情は先ほどと打って変わり明らかに動揺が見て取れるものになっていた。 (なんか居た堪れない) 彼女がどんな気持ちで俺の話を訊こうとしているのかを察すると、あまり長々とした話をするのは憚れた。
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