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(それでも君は自分が悪いと思ってしまうんだな)
出逢った当初から本当の自分と表向きの猫被りの自分とのギャップに悩んでいた彼女。表向きが完璧過ぎれば過ぎるだけ本当の自分を曝け出す機会も勇気もどんどんなくなって行った。
そんな息苦しい生活から解き放してやりたくてこの薄気味悪い能力を利用して彼女と一緒に暮らし始めた。
せめて俺の前では──俺と一緒にいる時だけは本当の自分を晒して心を楽にして欲しいと願ってのことだった。
しかし俺はちょっと勘違いしていたようだ。
彼女の本当の姿は表向きの完璧な彼女と何ら遜色のないほどに素晴らしいものだった。口に出す言葉と心に灯す言葉がほぼ同じだなんて奇跡みたいな人格者には今までに出逢ったことがない。
というか、表と裏があるのが人間だと思っているから表と裏があって当然だとすら思い、半ば諦めていた。だからこそ彼女の存在は俺にとっては眩しいばかりだった。
(本当の君を曝け出したって君の崇高さが無くなったりはしない)
それをいつか彼女に言えたらいいなと思うが、それを言うってことは当然俺の能力のことも話さなくてはいけない。
今はまだ怖くて真実を告げる勇気はないけれど、いつかは……と願わずにはいられない。
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