flavorsour 第一章

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「そろそろ考え事は終わった?」 「──え」 「もうじきバスの発車時間になるよ。バス停に移動しない?」 「え……あの、でも」 色々考えてぼんやりとしていた私を榛名さんはバス停に促した。 「行こう」 「いえ、ひとりで帰れますから」 先を行く榛名さんに少しだけ声を張って伝えた。私の声に榛名さんの脚が止まった。そして私の顔をジッと見たかと思ったら「そんなに警戒しなくてもいいよ。こんな見た目でも俺、好きでもない女の子を襲ったりしないから」なんて言い放った榛名さんにカチンと来た。 (何、そのまるで私には気がないってことをアピールしているような発言は!) いや、好意を持ってくれなくて大いに結構だ。私だってこういう人に好かれたいとは思わないし、かえって好意を持たれたら厄介だ。 (でもでもそれでも! その言い方はなんか……色々とムカつく!) 私は気が付かないうちに鼻息を荒くしてしまっていた。 「その方がらしいよ」 にこにこしながら榛名さんが何か言った。 (今、なんて) 吐き出された言葉が分からずに訊き返そうとしたけれど 「伊志嶺くんの会社での様子、訊きたくない?」 「え」 「彼、本当に面白いよね。つい昨日も取引先の会社での打ち合わせの席で──」 「……」 (なんで突然蓮の話?) なんて呆気に取られている間にも榛名さんは話を続ける。
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