flavorsour 第四章

41/42
前へ
/402ページ
次へ
食事の後片付けを終えた俺に「先にお風呂どうぞ」と言われたが「少しやらないといけないことがあるから」と返して彼女を先に入らせた。 彼女が洗面所のドアを閉めた音を確認してからしばらく、続けて浴室の扉の音も微かに聞こえたので座っていたリビングのソファから立ち上がった。 そして向かったのは窓際に置かれている植木鉢。嶋が彼女に渡したブーゲンビリアの花が植えられている鉢だ。 (まさか本当に?) 半信半疑の気持ちがある中で徐に植木鉢に手を掛け土を少しずつ掘り起こし始めた。割り箸を使ってなるべく根を傷つけないように慎重に掘って行くと割り箸の先が何かに当たった感触がした。 (はぁ……ビンゴか) 感触がした処に指を入れ、其処に埋まっていた物を取り出した。小さなビニール袋に入っていたのは黒くて四角い機械。見るからに怪しい形状をしたものだ。 ──つまりこれが嶋の弱味となる犯罪行為の証拠品 これはネットでも簡単に買えるGPS機能付きの発信機だ。嶋は植木鉢の土の中にこれを埋め込んで家の場所を特定したというわけだった。 あの時聞こえた嶋の心の声にまさかとは思ったが、こうやって実際に物が出て来たことで本当の嶋は危ない奴だということが確定された。 しかしそれにしてもやり方が中途半端だと思わずにはいられない。もし仮に何らかのアクシデントで植木鉢の中からこれが見つかった場合、嶋はどうするつもりだったのだろう。
/402ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1810人が本棚に入れています
本棚に追加