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『違います! ……実は……不具合、が、見つかりまして……』
『不具合?』
『は、はい。あのブーゲンビリアは家で育てていたものの株分けだったんですが、先日家の花が害虫被害に遭っているのが見つかって、もしかして伊志嶺さんに渡した花にも何か悪いものがあるんじゃないかと気になってしまって……』
『じゃあ此方で調べて対処しますよ。害虫だったら薬で駆除出来ますよね?』
『いえ、それには及びません! お願いですから一度返してもらえませんか?!』
『……』
嶋さんがあまりにも必死になって訴えるので戸惑いながらも了承してしまった。
嶋さんに鉢植えを返す前に花や葉、茎など念入りに見てみたが特に気になる箇所は見つからなかった。
この鉢の花は大丈夫ではないのだろうかと思っていたけれど、鉢を返す経緯の話をして一緒に見ていた榛名さんが『返した方がいいよ』と言った。
『どうしてですか? 特に悪いところはないように見えるんですけど』
『嶋さんって花を育てるプロなんでしょ? だったらそういう人のいうことは聞いた方がいいよ』
『プロかどうかは分かりませんけれど……そういうものなんですか』
『そうそう。もし誤った知識で薬を塗布して万が一にもこんなに綺麗に咲いている花が枯れちゃったら悲しいでしょ』
『それは……そう、ですね』
榛名さんの言うことはもっともだと思い、鉢植えを嶋さんに返したのだった。
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