flavorsour 第五章

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いつもの時間に起きて来た榛名さんと挨拶を交わす。 「おはよう、蘭ちゃん」 「おはようございます」 にこやかな笑顔の榛名さんに心の奥底で密かにときめき、それでもそんな気持ちをおくびにも出さずに澄ましている。なのに── 「……」 「……」 「……」 「……あの、榛名さん」 「ん?」 「どうしてそんなににこにこして私の顔を見ているんですか」 「にこにこして蘭ちゃんの顔を見たらいけない?」 「そういうわけではないのですが」 「ふふふっ」 「……」 (なんでどうしてこんなに見られているの?!) いつもとはほんの少し違う様子の榛名さんに戸惑う。だけど好きな人の笑顔を見られるのは嬉しいと思ってしまうから(たち)が悪い。 「あの……顔を洗って来たらどうですか? もうご飯、食べられますけれど」 「あーそうだね。俺、寝起きのまま来ちゃった」 「……ですね」 いつもと同じと思っていたが今日に限って榛名さんは部屋を出てからすぐにキッチンへと入って来ていた。 (いつもは先に洗面所に行ってから来るのに) そういうところではいつもとは少し違うのかなとも思った。 そうして洗面所へ向かうために数歩行った処で榛名さんは不意に止まった。 「蘭ちゃん」 「はい」 「今日は外食しない?」 「──へ」 「明日は休みだしさ、久しぶりに外で食べてもいいと思わない?」 「それは……構いませんけど」 「よし、決定。あ、お店は俺が決めてもいい?」 「はい」 「よしよし。期待していてね」 「……」 (えぇぇぇぇ──どういうこと?!)
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