flavorsour 第五章

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朝の出来事に未だ恥ずかしさを覚えている私の視線は先ほどから行ったり来たりを繰り返している。PC画面の中央に映し出されているデータ表と右下隅の時間表示を。 そつなく仕事をこなしながらもどうしても時間が気になって仕方がない。 (あと45分) 終業時間までのなんと長いことか。正直今までこんな風に終業時間が待ち遠しかったことはない。仕事に集中していればおのずと時間は過ぎて行ったのだから。──ということは (集中、出来ていないのか……) それほどまでに私は榛名さんとの外食に浮かれているようだ。 (何処に連れてってくれるんだろう) 昼間携帯を確認すると榛名さんから待ち合わせ場所を報せるメールが届いていた。指定された待ち合わせ場所は電車に乗って行くとある駅の改札口だった。 いつもはバス通勤の私。久しぶりに乗る電車にも少し緊張しているのかもしれない。 それに榛名さんが何処のお店に連れてってくれるのかという期待とちょっとした不安。色んな感情が私の中で混ぜ合わさっている。 それでもやっぱり一番強い感情は【嬉しい】だった。 別にデートに誘われたわけじゃない。ただの外食だ。 それにふたりで食事するなんてこと、もうとっくに慣れている。今更食事をする場所が違うだけでそう大して新鮮さはないだろう。
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