flavorsour 第五章

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(それでも……やっぱり嬉しいな) 榛名さんに対する自分の気持ちがはっきりと見えた今となってはなんでもかんでも新鮮に思えてしまう。それが例え独りよがりな新鮮さでも。 だけどそれでいい。報われない恋をしているとは充分に理解している。だからこそその中でも小さな幸せを見つけたいと思うくらいは許されて欲しい。 そうしてまたPCの右下隅に目が行く。 (あと40分……って先刻から5分しか経っていないの?!) 今日に限って時間がゆっくり流れる魔法にでもかけられているのではないかと錯覚するほどの時間の進みの遅さ。でもだからといって仕事は疎かに出来ない。 (万が一にでも残業にならないようにサッサと片付けてしまおう) 何が何でも約束の時間に間に合わせるために一時(いっとき)浮かれた気持ちを封印して目の前の作業に没頭した。 そんな短期集中のおかげで残りの業務を終業10分前には終わらせることが出来た。 それとなくデスク周りを整理していると終業時間を報せる社内チャイムが鳴り響いた。 (終わった!) チャイムが鳴り終わると同時に席を立った。榛名さんから指定された待ち合わせ場所はそんなに急がなくてもいつも通りの退勤時間でも充分間に合う位置にあった。 約束した時間だって今から駅に向かって電車に乗っても相当早く着いてしまうくらいだ。
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