flavorsour 第五章

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突然の衝撃にありえないほど驚いて体を震わせてしまった。 「あ、驚かせてごめん。俺俺」 「……え」 振り向いた先にいたのは榛名さんだった。 (え……えっ……えぇぇぇぇ!??) まさか待ち合わせの駅ではない此処にいるはずがないだろうと思っていた人がいたことに一瞬呆けたけれどすぐに違った驚きに変わった。 「えっ、榛名さん?! どうして此処にいるんですか?」 「いやぁ……それはちょっとした心配事があって、ね」 「心配事?」 「普段電車を使わない蘭ちゃんがちゃんと目的地まで辿り着けるかどうかっていう心配」 「……は?」 「ほら、蘭ちゃん、方向音痴じゃない」 「!」 (そ、それは……そうだけれど~~~!!) 確かに榛名さんがいうように私はちょっと……ほんのちょっとだけ行ったことのない場所に行くことが苦手だけれど…… 「だ、大丈夫ですよ。ちゃんと携帯で目的地までのルート、確保していますし」 「まぁ、そうなんだろうけどさ……もういっこ、心配で」 「なんですか」 「ほら、この時間帯って電車、混むじゃん」 「そうなんですか?」 「そうなの。ここら一帯の企業の帰宅時間が重なって割と混雑するんだよね」 「はぁ……それが心配なんですか?」 「心配でしょ。蘭ちゃんみたいな美人さんが満員電車に乗っていたら」 「?」 「全く……そういうの全然気にしていないんだからな。やっぱ迎えに来て正解」 「え……──っ?!」 当然榛名さんが私の手を取った。その不意打ちに驚き咄嗟に繋がれた掌を放そうとしたけれど逆にグッと強く握られてしまった。
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