flavorsour 第五章

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私の知り合いにもお店を経営している人がいるけれど、其処もこのお店同様こじんまりとしたお店で、完全個室で一見さんお断りの予約制だった。 父の友人のお店だから小さい時から外食するとなるともっぱらそのお店を贔屓にしていた。 だからなのか入ったばかりだというのに同じような形態のこのお店が既に気に入ってしまった。 「蘭ちゃん、何にする?」 メニュー表を見ながら榛名さんが訊いて来た。 「そうですね……どれも美味しそうで迷います」 どうやらおばんざいのお店のようでメニューには伝統的な定番ものから独創的で奇抜なものまで色々あった。 目に留まったのは其々違ったものを少しずつ味わえるコース料理で、なんとなくお得感がしたのでそれにしようと思った。すると── 「ねぇ、この三種類あるコース料理の楓と柊を頼んでシェアしない?」 「え……あ、はい」 「いい? 注文するよ」 「お願いします」 (……驚いた) 榛名さんがお勧めして来たのは私がどちらにしようかと悩んでいたコースだったから。 お肉メインの楓コースとお魚メインの柊コース。どちらのコース料理も美味しそうで迷っていた最中に榛名さんからシェアしようと提案してもらって驚いた。 (まさか本当に私の考えていることを……) なんて思っていると注文を終えた榛名さんが「そういえばさぁー」と話しかけて来た。 話は他愛のない世間話だったけれど、いつの間にか一瞬考えていたことはすっかり頭の中から消え去ってしまっていた。
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