flavorsour 第五章

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コース料理はどちらも美味しかった。榛名さんと分け合いながら食べるというだけでも美味しさに拍車がかかっているような気がした。 「このさわらの照り焼き美味しいね」 「はい。こっちの鴨肉のローストも癖が無くて美味しいです。かかっているソースはなんだろう。黄色いけれどオレンジじゃないですよね」 「お品書きに書いてなかった? えーっと……メロンだって」 「メロン?! 意外ですね」 自分たちでは思いつかないような食材や風味に驚きながらも始終舌鼓を打った。 (やっぱり料理も当たりだった) メイン料理を食べ終え、デザートが来るまでの間自然とため息が出た。 「蘭ちゃん、もうお腹いっぱいになっちゃった?」 私がついたため息を満腹から来るものだと思ったのか榛名さんが訊いて来た。 「あ……いえ。今のは美味しかったなという意味のため息で……確かにお腹はいっぱいになりましたけれどデザートは別腹なので食べられます」 「そっか、よかった。此処、デザートも美味しいよ」 「……」 何気なく漏らした榛名さんの言葉が私の心にちょっとした影を落とした。 (『デザートも美味しいよ』ってことは……) 榛名さんはこのお店でデザートを食べたことがあるということで、つまりは私以外の人とも此処に来たことがあるという確信になった。 (ふぅん……そうですか。私以外の人とも来たんですか) 一旦は消え去っていた疑念が再び湧いて出て来てしまい楽しかった気分が少し落ちてしまった。
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