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モヤッとした気持ちでいるとドアが叩かれ『失礼します』と声がした。しかしその声は先ほどの女性スタッフではなく男性だった。開かれたドアから覗いた顔には見覚えがあった。
(あ……お店に入った時カウンター内にいた人)
来店した時、不意に視線を感じ視線を送った先にいた料理人の格好をした男性だった。
「デザートをお持ちしました」
男性はそう言って私と榛名さんの前に可愛らしいスイーツが乗ったお皿を置いた。
「可愛い……」
料理の時同様、またしても自然と言葉が出てしまった。
「ありがとうございます。味も美味しいと思っていただけたら嬉しいです」
「あ、はい」
男性の寡黙そうな見た目からは想像出来ないほどフランクに話してくれたことに嬉しくなった。
(やっぱりこのお店、素敵だな)
改めてそんな風に思っていると「彼女がこの店、すごく気に入ったようだよ」と榛名さんが男性に告げた。
「ちょと、榛名さん」
榛名さんが男性に対して軽口を叩いたことに驚きつつ焦っていると男性はにこやかな笑顔を浮かべた。
「そうか、それはよかった」
「あぁ、料理も美味しかった。瑠美さん、腕をあげたな」
「おかげさまでな。それでもっているようなものだ、この店は」
「それだけじゃないだろう。おまえのスイーツだって映えそうな感じじゃない」
「まぁ、静か~に宣伝してもらっている感じかな」
(あれ……もしかして)
榛名さんと男性のやり取りを見ていてひょっとしてと気が付いた。
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