flavorsour 第五章

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「あの……もしかしておふたりは知り合い、なんですか?」 榛名さんと男性の話に割って入った私に榛名さんは事もなげに「そうなんだよ」と答えた。 「こいつ、この店のオーナー兼パティシエの戸村創史(とむらそうし)。高校生の時からつるんでいる俺の親友なの」 「親友? 悪友の間違いじゃないか?」 「え、創史はそう思っていたの? 俺は親友だって思っていたのに」 「まぁ、おまえがそういうならそういうことにしておくか」 「ふはっ、なんだよそれ」 榛名さんと親友の男性──戸村さんはそれらしく会話が弾んでいた。 (親友って……普通に友だちっていう意味での……よね?) 榛名さんが同性愛者だからということもあって思わず友情と愛情の思い違いをしてしまいそうになる。 「先刻案内とか配膳してくれた女性がいたでしょ? 彼女は創史の奥さんで瑠美さん。料理はほぼ彼女が作っているんだよ」 「そうなんですか」 親友の戸村さんは結婚していたという事実に驚いた。 (つまり戸村さんは榛名さん同様同性愛者ではない、ということか) 当たり前だけれど同性愛者の友だちが全て同じ嗜好の人だということはない。お互いの恋愛対象者が同姓か異性かの違いで友だちになったりならなかったりするわけでもないだろう。 だけど戸村さんは榛名さんが同性愛者だと知っているのだろうか。親友というぐらいだから知っているのかもしれないけれど、迂闊なことは話さないようにしようと思った。
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