flavorsour 第五章

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「鉢植えはまた今度プレゼントするよ。とりあえず今日はデートなんだからこっち」 「……」 (何……この展開は) 驚き過ぎてまともに言葉が出て来ない。まさか榛名さんがこういうことをする人だったとは思わず、且つそんな素振りも感じられなかったから本当に驚いた。 「いつの間にブーケなんて用意していたんですか?」 ようやく出て来た言葉はそれだった。 「そこら辺は秘密にしておきたいなぁ……。とはいえそんなにスマートなことでもないよ。事前に用意していたものをお店で預かってもらっていて蘭ちゃんが席を外した隙に手元に──って感じだから」 「事前に用意って……」 よくよく考えれば榛名さんは私の会社の最寄り駅まで来ていた。それは即ち私が退勤する前には駅にいたということで…… しかもその前にお店にブーケを置いてもらっていたということを考えると── 「榛名さん、ちゃんとお仕事したんですか?」 「えっ」 「だって駅まで迎えに来たりブーケを用意したり……通常の勤務時間内では無理な行動じゃないですか?!」 「あーそこを気にするのかぁ」 「しますよ。外食するというだけで仕事をサボったりしていたらと考えたら──」 「サボっていないよ」 「本当に?」 「本当本当。今日の予定は前々から決まっていた得意先の外回りで、そのまま直帰していい案件だったから効率よく仕事をこなして随分早く終わったんだから」 「外回り……直帰」 (なるほど……そういう理由なら納得出来るかな) 一連の行動がまっとうなものであったことに少し安堵した。
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