flavorsour 第五章

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すると彼女の視線が私の持っていたブーケに注がれたのが分かった。すぐに視線は外されたけれど今度はその視線の先が榛名さんに向かい「素敵な彼女さんですね」と言った。それを訊いた私はドキッとした。 (か、彼女?! 彼女だと思われているの、私?!) 内心慌てている私を尻目に榛名さんは「そうでしょ」なんて軽く受け答えしている。 確かにこんな可愛らしいブーケを持っていれば彼女という肩書を持つ女性だと思うのが普通なのだろうけれど…… (本当は彼女でもなんでもないんです!) ふたりの間に割って入ってそう言い返したかったけれど勿論そんなことを口に出すことも出来ずに曖昧に笑ってそのままお店を後にした。 最寄り駅に向かうために来た時と同じ道をふたりで歩く。少し前を行く榛名さんの背中をジッと見つめながら思うのは複雑な心境。 (榛名さんには色々と訊ねたいことがある) 友だちのお店に連れて来てくれたことやデートだといった真意。私を彼女だと肯定したこと、それに──このブーケ。 先刻一瞬思い出したことが今は鮮明になって、それが余計私を困惑させている。 (だってこのブーケ──) そう考えた時、突然榛名さんが立ち止まり危うくぶつかりそうになり盛大に焦った。
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