flavorsour 第一章

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「あの……どうして突然笑い出したんですか」 私は至極当たり前の質問をした。 「あー……いや、君、顔が面白い」 「──は?」 「先刻からなんか黙っているなと思って顔見ていたら、色んな表情するから可笑しくて」 「……」 「まぁ、俺としては澄ましている顔もいいとは思うけど、そのコロコロ変わる表情豊かな方が好感持てるな」 「~~~っ!」 (嘘! まさか──) 私は考え事をしている時、表情がコロコロと変わっているのだろうか?! 人前で深く長く考えたりしないからそういうのを指摘されたことがなかったけれど……しかも可笑しな方向で変わっているのだとしたら──…… 「美人の変顔、最高!」 「!!」 (さ……最悪だ──!) 『変顔』の言葉に一気に恥ずかしくなった私はもう澄ました顔なんて出来なくなってしまった。 最初に会った時から不思議な人だった。家族以外でこんなにもひとりの人のことをあれこれ考えたことがなかった。 ──だからある意味だった (いや、だからといって絆されないし!) 花咲里を始め、伊志嶺家の敵になるかもしれない相手に関心を持つようなことはしない。だから先刻までの腑抜けた気持ちを心の奥深くに押し込めた。 そんな私の雰囲気を察したのか、榛名さんも先刻までの柔らかな表情が瞬く間に消えた。
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