flavorsour 第六章

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創史の店はカウンター席以外は完全個室タイプだったから彼女を連れて行くのに丁度いいと思った。それに既に結婚していた創史は瑠美ちゃん一筋だから彼女を連れて行っても安心出来た。 もしかしたらこれが最後かもしれない──なんて思いながら彼女との外食を楽しんだ。彼女も店の雰囲気、料理を楽しんでくれたのは充分伝わった。 それだけにあんなに固く決めていた決意が揺らいだ。せめて能力のことだけでも黙っていれば……なんて何度も揺さぶられた。 いくら善良で優しい彼女でも考えていることが分かるなんて言われたらきっと怒るに違いない。例え怒らなくても気持ち悪がられるだろう。 反対に俺が彼女の立場だったら嫌な気持ちになるから。 誰だって本音は知られたくないものだ。隠しておきたい本音が知られるだなんて決していい気はしないし、ましてやそれを隠してずっと一緒に住んでいたとなれば── (いいとこ罵倒されて呆れられて出て行く──かな) 俺のこんな能力、百年の恋も冷めるには充分な理由になるだろう。それは今まで付き合って来た女性たちがみんなそうだったから。 彼女は他の女性とは違う──そう思いたいのは俺の我がままな願望でしかなかった。
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