flavorsour 第六章

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自宅の鍵を開け家の中に入って電気をつける。順番に手洗いうがいを済ませ、一旦着替えるために其々の自室に入った。 「……はぁ」 スーツの上着を脱ぎ、ネクタイを緩めたところでため息が出た。とうとうここまでやって来たという気持ちに胸が詰まって苦しい。 今更話をするのを止めるということも出来ない状況の中、また頭の中にムクムクと沸き上がるのは話すか話さないの葛藤。何度同じことを考えれば気が済むのか、考えている本人である俺自身腹立しく思った。 最後の覚悟を決めてようやく部屋を出た。リビングに入ると既に彼女がソファに座っていた。 (考え過ぎていて遅くなってしまった) 自分から話があると言って彼女に時間を割いてもらったのに、と申し訳なく思った。 「遅くなってごめんね」 「大丈夫ですよ。お茶、淹れて来ますから少し待っていてください」 そう言って彼女は立ち上がりキッチンに向かった。すれ違った横顔はいつも通りで特に怒っているようでもなかったのが救いだった。 (はぁ……往生際が悪過ぎる) こんな風にグジグジ悩むのも躊躇うのも本当は性に合わない。俺はいつかはやらなければいけないことならとっとと済ませてスッキリしたい派だ。 (ここが正念場だ!) これで最後の最後だとばかりに覚悟を決めた。
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