flavorsour 第六章

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マエマエカラ オモッテイマシタ モシカシタラト 「……」 彼女は口を閉じたままジッと俺を見つめているだけだった。 イマモ キコエテイルンデスカ ココロノコエガ 「……」 キコエテイルナラ コタエテクダサイ キコエテイルト 「……聞こえているよ」 「!」 彼女の望んだ言葉を口にした。その瞬間、彼女の顔が分かり易く歪んだ。 (あぁ……やっぱり君もそんな顔をしてしまうのか) 彼女だけは他の女性とは違うと思い込んでいた。彼女だけはこんな俺でも受け入れてくれると信じていた。 だけどそんな(おご)り高ぶった気持ちは彼女のその表情で一瞬にして吹き飛んでしまった。 (ヤバい……なんか泣きそう) みっともない話だが今の心境としてはそんな感じ。いいことばかり想像していただけにいざそれに裏切られた時のショックは相当なものだった。 そんな最悪な気持ちの中でまともに彼女の顔が見られなくなっていた。 (今、見たら……先刻よりも気持ち悪いものを見るような顔になっていたら……) それこそ再起不能になると危惧したから。 (はぁぁぁぁーやっぱ言うんじゃなかった!) 項垂れてそんなことを考えた瞬間── 「もう……信じられない!」 「!」 彼女の声にビクッと体が震えた。『もう……信じられない!』の言葉の続きが怖くて聞けない。 だけど同時に次に彼女から吐き出される言葉が例え罵詈雑言でも聞きたいと思ってしまっている。 彼女がどんな言葉で俺を否定するのか──それすらも受け止めたいほどに俺は彼女のことが好きで堪らないようだ。
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