flavorsour 第六章

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その状況から自然と言葉が吐き出された。 「恥ずかしいって……それだけ?」 「……え」 「俺、人の考えていることが分かるんだよ? それって気持ち悪いとか気味が悪いとか……嫌な気持ちにならないの?」 「嫌な気持ち?」 「そう。だってそういうのって隠しておきたいでしょ? 口に出している言葉と心の中で考えていることは大抵違っているんだからさ」 「……」 俺の言葉に赤みを帯びていた彼女の顔が徐々に元に戻りつつあった。そしてジッと俺の顔を見た。 「な、何?」 「……私、嫌な女でしょう?」 「──え」 彼女の言葉にドキッとした。それは予想外の言葉だったことからと、彼女の口から出た『嫌な女』という言葉があまりにも彼女のイメージにそぐわなくて驚いたから。 「嫌な女って……」 「だって私、心の中では酷いことを思っていた。沢山、嫌なことを考えていたと思う」 「……」 「口では綺麗ごとを言っているくせに心の中では人を見下して酷いことばかり思っていたから……だから嫌な女なの」 「……」 (なんか……おかしい) 彼女の言い分を聞いているうちにおかしいと思って来た。俺の身構えていたことと彼女が捉えている状況が違っているようだ。 どうやら彼女は心の中を読まれていたことに対しての怒りではなく、読まれていた内容に対して焦燥感を覚えているようなのだ。 (これは……初めてのパターンだ) これまでとは違った状況に置かれてこれからどうしたらいいのかと困惑する。いつもは俺の能力を暴露してからは憤慨した相手とはまともな会話にならずにそのまま離れて行くという流れだった。 だからまさかの状況にこれからどんな話をしたらいいのか迷ってしまう。
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