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そんな俺に彼女は少し表情を硬くしながら続けた。
「……呆れましたか?」
「──え」
「私に……」
「……」
「裏表のある私を知って……幻滅しませんでしたか?」
「?!」
(何を言っているんだ!!)
彼女の言葉にガツンと頭を殴られたような気がしてようやく覚醒した。そして感情のまま彼女を抱き締めていた。
「は、榛名さん?!」
「なに言ってんだよ! 君、ちゃんと訊いていた?!」
「え」
「俺は君のことが好きだって言ったんだよ!」
「……はい」
「それは君の心の中を知った上でそう思い続けているってこと!」
「!」
「君が巨大な猫を被っていることなんて出逢った時から知ってんだよ! だけどそれでも君の表も裏も知った上でどんどん惹かれていって仕方がないって言ってんの!」
「~~~っ」
彼女に誤解されたくなくて本心を包み隠さずに告白した。幸いにも抱き締めていたおかげで彼女の顔を見ることがなかったというのも言葉を勢いづけた。
「君の本心は読まれて困ることも恥じることも呆れることも一切ないものだ!」
「……」
「それに俺は君の本心に何度も救われた!」
「──え」
『救われた』と口にした瞬間、彼女の体がピクリと反応したのが分かった。
「救われたって……どういう意味、ですか?」
「……」
「榛名さん」
彼女は身動ぎして俺の腕から体を放させた。そして向き合う形で顔を見合わせた。
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