flavorsour 第六章

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だったら彼女の心の声から知るしかないかと意識を集中させた。──が、どういうわけか彼女の心が読めなくなっている。 よくよく考えてみれば少し前から彼女の心の声が読めなくなっていることに気が付く。 「ごめん……なんか急に心の声が分からなくなって──」 「どうして心で分かろうとしているの」 「──え」 「どうして声に出して聞こうとしないの」 「!」 その言葉は俺の心にとても強い衝撃を与えた。 「私が謝った理由が分からないなら直接聞いてくださいよ」 「……」 「声に出すより先に能力(ちから)を使って本心を覗いて分かったような気にならないで。私はあなたとちゃんと会話がしたい」 「……!」 更に続いた言葉に彼女が何を言わんとしているのか分かったような気がした。 (俺は……先に心を読む癖がついていた?) そんなこと考えた事がなかった。いつもちゃんとした会話をしていると思っていた。 ──していたと……思っていた? しばらく考えてそういえばと思い当たることが何度かあったような気がした。それは彼女の本心を聞いていると度々聞こえて来たことだった。 彼女は何度か俺が心が読めるんじゃないかと疑問を持ったことがあった。彼女がそう思う度に俺は上手く誤魔化して来た。 だけどそれは即ち彼女がそう思うような会話を俺がして来たということの裏付けになっているのではないだろうか。
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