flavorsour 第一章

25/52
前へ
/402ページ
次へ
「そっか……ないのか」 「えぇ。だから」 「でも俺の方はあるかも」 「──は」 「俺、もっと君と話がしたいな」 「……」 「だからたまにご飯でも食べながら話しない? 例えば──伊志嶺くんのこととかさ」 「!」 (蓮のこと?!) いうに事欠いて『蓮のこと』といった彼に一瞬嫌な予感がした。 (もしかしたらこの人は本当に蓮のことが好きで花咲里から奪おうとしているの?!) そのために私に近づこうとしている? ──そういう意味での嫌な予感だった。 こんな人なんか無視すればいい。適当にあしらって蓮との繋がりを持たせないようにすればいい。 (そうだ、何も考えることなんかない) 出た結論から連絡先を教えないと口にしようとしたが「君と話せないならもう直接行くしかないかなぁ」なんて言い出した。 (はぁ?! 『直接行く』って何処に?!) 榛名さんの言葉は抽象的過ぎて理解するのに時間がかかる。 「そっかぁ……行くしかないか。仕方がないな。人間、素直が一番だしね」 「……」 何故か分からないけれど私にとってこの榛名さんという人は色んな意味を含めて今までに対峙したことのない類の人間だった──。
/402ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1809人が本棚に入れています
本棚に追加