flavorsour 第六章

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(ヤバい……可愛過ぎてもはや尊い) いざ手に入ったからといって早々に欲望の発散に使いたいわけじゃない。いや──勿論そういうことをしたいのはやまやまなのだが、大切過ぎて不思議とそういう気持ちが萎えて行くのが分かる。 あまりにも好き過ぎて、可愛過ぎて、純粋過ぎて──…… (そういうこと、あるわけないと思っていたけど) 愛し過ぎて手が出せないなんて矛盾、漫画や小説の中だけの話かと思っていた俺はこの身を持ってそれを実感していた。だから今、彼女に『キスしたい』と言った本意は── 「……えっ」 目を瞑ってくれていた彼女が驚いたように目を開けた。 「今はここで充分だよ」 「……」 彼女は俺が額にキスしたことが信じられなかったのか、しばらくの間言葉を発しなかった。言葉を発しない彼女は何故か怒っている──というか不満げな表情を浮かべた。 「あれ、ひょっとして額、ダメだった?」 「……だめ」 「え」 「……」 「蘭ちゃん?」 「……キスするって言ったら……恋人同士がキスするっていったら普通は………じゃないの?」 「!」 『普通は………』の後がよく聞き取れなかった。だけどそれを聞き返す前に彼女の顔が間近に迫った。そして流れるような動作で俺の唇に彼女が触れた。 そのあまりにも予想外の行動にしばし頭の中がフリーズした。
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