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その笑みは何を意味しているのか分からなかったが、この先に進むことを拒んでいる様子ではないことだけは分かった。
「蘭ちゃん、好きだよ」
「私も……好き」
愛する気持ちを言葉にして気持ちを込めたキスを唇や首筋に落としながら熱く潤っている中へ自身をあてがった。その瞬間、彼女の体が震えたのが分かったが構わずにゆっくりと腰を進めた。
息を飲んだ彼女の声を聞き流し、柔らかな感触を味わいながら奥を目指した。だけど腰を進める毎に彼女の表情は苦悶に満ちたものになって行った。
(……え)
彼女の表情と奥へと目指している熱がある一定の処で留まることで気が付いた。
「蘭ちゃん、もしかして──初めて、なの?」
「……」
「蘭ちゃん」
顔を歪めた彼女は俺の問いかけに視線を外した。そしてそれが肯定を示す仕草だと気が付いた。
(俺は馬鹿だ!)
この期に及んで彼女が処女だとは思わなかった。だって彼女には付き合っていた男がいたから。いや、直接彼女から聞いたわけではなく、彼女の心の声を聞いてそれを知っていた。
だから彼女はとっくにその男に純潔を──と思い込んでいた。
(まぁ、それを考えた時は腸が煮えくり返ったけど)
どうして彼女の初めてが自分ではないのかと、悔しかったり焦燥感を抱いたりした。
(なのに何故──?!)
「だって蘭ちゃん、彼氏、いたんだよね」
自然と口にしてしまった言葉に彼女は目を見開いた。
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