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『躊躇わないで』
『──え』
『榛名さん、今、戸惑っているんでしょう?』
『っ、なんで分かるの』
『分かるの。……だって』
──『だって』の先を彼女が中々話そうとしなかった理由をようやく理解出来た。
「自業自得だと思いました。今まで私が見せて来た上辺だけのイメージに囚われて彼は私をそういった行為に興じる女じゃないと思い込んでしまって……だから──」
「ごめん」
「……え」
彼女の言葉を遮って謝罪した。もうそこから先を訊かなくても全てを理解したから。それと同時に胸の中は歓喜の気持ちで溢れていた。だって彼女の純潔はまだ其処にあったのだから。
「辛い話をさせてしまってごめん」
「……いえ」
「だけど俺はそんな情けない男とは違うから」
「!」
何か言いたげだった彼女の口をキスで塞いだ。もう何も言わなくていい。俺はここに来て本当の──嘘偽りない伊志嶺蘭という女を知ったから。
「本気で嫌がらない限り俺は君の全てを奪う」
「……」
「出来るだけ痛くないように努力はする──けど」
「嫌がったりなんかしないから」
「!」
彼女が俺の首元に両腕を絡めて引き寄せた。そして耳元で甘く囁いた。
「だから私の全てをあなたのものにして」
その瞬間、辛うじて残っていた俺の理性は完全に吹き飛んでしまっていた──。
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