flavorsour 第一章

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暗い部屋に灯りをつけてそのままベッドにダイブした。 「はぁぁぁー……疲れたぁ~~~」 しかしすぐにうつ伏せで倒れた体を起こし着ていた服を脱いだ。 小さい時からの習慣で外で着た服のままベッドに寝転がるのが嫌だった。ベッドには部屋着、あるいはパジャマでないと入れないし座れない。 (いけないいけない、つい油断した) いつもなら絶対にしない愚行をしてしまったのは全てあの人のせいだろう。 つい数分前まで一緒にいた人──榛名邦幸(はるなくにゆき)。 「……」 (名前、邦幸っていうんだ) 着替え終え、ベッドの縁に座り持っていた携帯を見つめた。其処にはフルネームと共に彼の連絡先が表示されていた。 『君の連絡先、教えて』 そう聞かれ、教えてなるものかと拒んでいた気持ちは彼から発せられた意味不明な言葉によってすっかり散り散りになってしまった。 (直接行くって……どういう意味?) やたらと引っかかるその言葉の意味が全く分からない。 蓮に対して素直な気持ちをぶつけに行くという意味か、はたまた花咲里に直接蓮のことが好きだからと宣言しに行くという意味か──考えれば考えるほどに分からなくなった。 結局その意味不明な言葉によって最終的に彼と連絡先の交換をし合ってしまったのだけれど。
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