flavorsour 第一章

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(しかも名前、ちゃん付けで呼んだよね、この人) 確かに榛名さんの方がひとつとはいえ歳上なのだからちゃん付けで呼んだっていいのだけれど…… (なんだか慣れ慣れし過ぎない?!) やっぱり見た目通りチャラい人なのだと再確認すると少しだけ頭が痛くなった。 そんなことを考えている間にも榛名さんは「じゃあ行こうか」なんて先導して歩いて行く。 (……ん?) 何故か榛名さんはどんどん先を歩いて行く。私は黙ってその後をついて行く形になる。 (あれ? 並んで喋らないの?) 此処まで来たということは一緒に目的のお店に行くのだろう。普通なら横並びになって話しながら行くものだと思ったのだけれど何故か他人行儀な縦並びになっている。 傍から見れば私と榛名さんが一緒の場所に向かっている者同士には見えないだろう。ただの通行人のような距離感だった。 (ひょっとして気を使っている?) 私の会社近くということもあって彼は敢えてそういう気配りをしているのだろうかという考えが芽生えた。 (これはどう捉えたら正解なんだろう) 彼の思考は全く分からなかったけれど、とりあえず常識的な人なのだろうかとまたしても彼に対しての好感度が少し上がってしまったことに眉をひそめた。 (私にとっては敵──なんだけどな) 今はまだ此方が一方的に敵視している状態だけれど、どうしても(もしかしたらいい人なのかもしれない)という思いが私の中で色濃く鎮座していた。
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