flavorsour 第一章

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「あの、榛名さん」 「ん?」 「食事をする前に訊きたいことがあります」 「え、それって食べながらじゃダメなの?」 「駄目です」 「えぇー俺、お腹空いているんだけど」 「私だって空いています」 「だったら──」 「今日はどういう目的でこういう席を設けたんですか」 「……」 このままだとのらりくらりと交わされて中々本題に行きそうになかったのでズバリと訊いた。 「榛名さんは蓮の会社の先輩ですよね。確かに私たちは顔見知りではありますがこうやってふたりで食事をするような関係ではありません」 「え、ふたりで食事するのはダメなの?」 「駄目──とは言いませんが、する理由が分かりません」 「する理由」 「何か私に言いたいこと、話したいことがあるということなら納得もしますが」 「……」 「あるんですよね、私に話が」 「……」 「だったらそれを先に訊かせてください。呑気に食事をする前に」 「……」 包み隠さず疑問に思っていたことを全て彼にぶつけた。 (さぁ、どう出る?) 私は目の前の彼をジッと見つめた。 しばしの沈黙が私たちの間に流れた。 (ひょっとしてこのままだんまり?) また何かいいように誤魔化して本意を言わないつもりなのかと思っていたが「うーん……そこまでいうのなら先に言っちゃおうかな」と意外にも話を逸らさずに私の質問に乗って来た。
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