flavorsour 第一章

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「飲み食いしながら和やかな雰囲気の中でさり気なーく言おうかと思ったんだけど」 「先に言っていただいた方が和やかになると思います」 「あ、そう? じゃあお言葉に甘えて。──蘭ちゃん、俺と結婚しよ」 「……」 (ん? ………今、なんて?) もしかして私の訊き間違え──…… 「きっと楽しいよ、俺と結婚したら」 「……」 (訊き間違えじゃなかった──!!) は? 何、突然? (誰と誰が結婚?!) 「俺と君」 「──は?」 「あ、いや。なんでもない」 「……」 何故か今一瞬、変な感じがした。その変な感じが何なのか考えようとしたけれど「俺、蘭ちゃんのこと気に入っちゃったんだよね。だから結婚したいなぁ」と捲し立てるように繰り出される結婚しようアピールが凄くて、考えなければいけないことが頭から煙の如くフッと消えてしまった。 (な、何なのよ、この急展開?!) 考えたことも予想したこともなかった言葉に翻弄されている。 (いやいや、落ち着いて、私) 突然こんなふざけたことを言うなんてからかわれている証拠。彼がいう『結婚しよう』にはなんの真剣味も含まれていない。 恐らくその言葉の裏には色んな思惑が込められているに決まっている。 少し冷静さを取り戻しつつあった私は真っすぐに目の前の彼を見た。
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