1808人が本棚に入れています
本棚に追加
とりあえず彼が私に近づいた真意は分かった。次に確かめるべきは──
「あなたは私が蓮の妹だから結婚したいと言ったんですか」
「……」
「蓮に近づくための手段のひとつとして私と結婚しようと、そういう不純な動機からいった言葉なんですか」
「……」
「まただんまりですか」
先刻と同じように私の言葉に答えない彼。それは私が確信を突いた発言をしているからだと思った。
そして案の定──
「そうだね。俺、伊志嶺くんのこと好きだから」
「っ！」
（言った！）
それからの彼は饒舌だった。
「俺、伊志嶺くんのことが好きだから一緒にいたいと思っているんだよね。だけど彼、結婚しちゃっただろう？ 俺よりも奥さん優先になって寂しいんだよ」
「……」
「なんかさ、モヤモヤするんだよ。俺の伊志嶺くん取っちゃってとか、奥さんに対して理不尽な気持ち抱いたりして」
「……」
「本当なら伊志嶺くんと奥さんをどうにかしたいなと思ったんだけど、それやっちゃうと伊志嶺くん、泣いちゃいそうじゃない」
「……」
「俺としてはそういう目に遭わせたくないんだよね。好きだから」
「～～～っ」
（お……思っていたよりもガチな案件だった──！！）
榛名さんから放たれる言葉の数々に心臓がドキドキして仕方がない。
（は……初めての経験っ）
今までの交友関係の中に同性が好きだという恋愛に触れて来なかったので驚きと衝撃が大きい。
しかも相手が自分の兄だということも驚きの一端を担っていた。
最初のコメントを投稿しよう！